・日本って物価が高いと思っている
・物価と給料に何の関係があるのか分からない
・なぜ政治家がインフレを求めているのか分からない
・物価が下がると生活しやすくなるから良いと思っている
かつて「東京は何でも高い街」と言われ「日本の品物は高価格で高品質」だと言われていました。でもそれももう昔の話です。今や日本にたくさん訪れる海外の旅行者は「安くて高品質」な日本という国に買い物や余暇を楽しみに来ています。
一方で「日本の国内で生きていくのであれば物価が安いことは生活がしやすくなる。何が悪いのか?」という意見もあります。
質問に対する著者の回答はこちらです
デフレーション(デフレ)は物価の持続的な下落を指す。日本は物価がほとんど上がらず、デフレに似た経済状況が長く続いている。これはインフレよりたちが悪い。縮小均衡が続けば、成長を続ける世界から日本は置き去りになり、日本は人材やモノを買い負ける。皆が300円の牛丼に収束していると、いつの日か牛丼も食べられなくなってしまう。「安さ」は生活者から見ると「生活しやすい」が、供給者の観点では収益が上がらない。すると賃金は据え置かれ、消費が動かず需要が増えない悪循環に陥る。いったん下げた価格は再び上げられないため、企業はなるべく値下げせずに最低限まで生産コストを下げたくなる。果たしてこれで、世界の秩序をガラリと変えるようなイノベーションが生まれるだろうか。個々の企業にとっては最適解でも、「安さ」はまさしく日本の停滞に結びついているのだ。そうしたことを考えれば、賃金と物価がパラレルに上がっていく国の方が、成長や発展性がある。その方が、人生プランに多様性も生まれるのではないだろうか。
引用元:安いニッポン
まさに著者の言う通りで、短期的には物価は安いほうがありがたいのですが、長期的に考えると物価が低いままだと企業の収益が改善せず、収益が改善しない限り所得の向上も見込めません。日本人は「安くて良いもの信仰」が非常に強く値上げを嫌うのでそんなデフレスパイラルが長く続きました。結果として今の日本は「安くて良いもの」を海外からの旅行者に提供しつつ、サービス業や製造業に従事する方たちは給料が据え置かれたままなので生活が苦しくなり疲弊しています。サービス業や製造業の方たちの給料が上昇しないということは購買力が上がらないということなので結局はその影響が全業種に波及していくことになるのです。一方で成長している国においては物価と賃金がスパイラルに上昇しつづけているので日本人が海外に行けば物価の高さにびっくりするという相対的には貧しい国になりかけています。
ディズニーもダイソーも世界最安値水準
ディズニーランドの入園料って高いですよね?我々日本人ならそう感じる人が多いと思います。でも世界的に見ると日本のディズニーランドの入園料は安いんです。
世界のディズニーランドの入園料を比べてみると日本の8,200円に対してフロリダは約1万4,500円、パリは約1万800円、カリフォルニアや上海も1万円を超えています。
一方で日本生まれのコスパの良い店舗の代名詞である「ダイソー」。こちらも今では100円均一で売っているのは日本のみ。台湾では180円、タイやオーストラリアでは200円を超えています。回転寿司やマクドナルドの値段も日本は世界で安い部類になります。
なぜここまで安いのか?それは日本の価格がここ20年ほとんど変わっていないからです。日本ではモノの価格が変わらない一方で平均賃金は減少しており相対的にみんなが貧しくなりました。一方でアメリカを始めとした世界各国は物価が上がりましたが賃金も上昇しています。
買われるニッポン
海外に比べて日本が安くなると日本の様々なものが外資に買われていきます。
例えばスキーリゾート地として有名なニセコは今海外からの旅行客に大人気になったのに合わせてどんどん外資マネーが流入しています。その結果、ニセコ地域にある5つの大手スキー場のうち3つは海外企業による運営です。また技術力があるのに日本の経済の停滞の煽りを受けて倒産しかかっている中小企業の多くが中国を中心としたアジアの会社に買われています。日本が得意としているアニメ業界においても日本企業が中国の会社に買われている現状があります。こうして有望な土地や技術力がいつ間にか海外の資本のモノになっていくのです。
ニッポンの未来
日本人の購買力が下がりモノの値段が上がらないとどうなるのか?
個人の問題
海外の高級ブランド品やワインや絵画など世界中同じ値段で販売されているモノを日本人が買うことが出来なくなります。そういうモノには興味がないよという人もいるかもしれませんが、「買う」という選択肢を持って買わないのと「買えない」では意味合いがまったく異なります
人材の流出
すでに起こっていることですが、語学力と技術を持っている優秀な人材は海外の企業に引き抜かれていきます。同じ仕事をしていても給料が違うのであればそちらに人が流れていくのは当然です
人材が育たなくなる
海外への留学などが授業料、生活費ともに高額で出来なくなる可能性があります。結果として海外の企業に買われて日本人は単純作業に従事するという可能性があります
まとめ
本書で指摘されているとおり日本人の給料が上がらないことは大きな問題です。この問題に対しては様々な議論がなされおり「国債などを活用して先に金銭を分配して購買力を上げるべき」「まずは企業が儲けることを助けて、結果として給料が上がることが望ましい」「富裕層に対する課税を強化して分配する。それによって購買力を上げることが望ましい」政治家、企業の中でも意見が分かれており本書の中でも沢山の経営者、大学教授、証券会社の社員などが意見を寄稿しています。
いずれにせよ我々に出来ることは自らのスキルを高めることでどんな環境になっても働けるよう準備しておくことだと思います。