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【要約と書評】ワークマンはなぜ2倍売れたのかを読んで

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この記事はこのような方にオススメ

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・ワークマンのことが知りたい

・なぜこんなに話題なのか知りたい

・この本の内容をざっくりと知りたい

 

ここ数年ワークマンが大ブームとなっています。

突如ワークマンをメディアで目にする機会が多くなり気になっている方も多いのではないでしょうか?

本書はそんなワークマン躍進の立役者であるワークマンの専務である土屋氏へのインタビューをまとめた本です。

 

第一章 ワークマンを変えた男

第一章は本書の主人公でもある土屋哲雄氏の紹介から始まります。土屋氏はもともと大手商社である三井物産で働いていました。そんな土屋氏が叔父の土屋嘉雄氏(ワークマン会長)から誘われたことでワークマンに入社したのが2012年。土屋氏は2014年に『中期業態変革ビジョン』という名の三箇条を社内外に宣言します

(1)社員一人あたりの時価総額を上場小売企業でナンバーワンにする

(2)新業態の開発

 ①客層拡大で新業態へ向かう

 ②『データ経営』で新業態を運営する準備をする

(3)5年で社員年収を100万円ベースアップ

 

第二章 データ経営

ワークマンではもともとデータが無かった。そんなアナログ経営を変革させたのが土屋氏。全社員を対象にカリキュラムに基づいてExcelの講習を受講させることで最低限のエクセル知識を身につけさせた。身につけさせたのはあくまでも基本的なExcel技術。決してエータサイエンティストを目指すわけではなく日常業務に必要な分析能力と異常値を発見する力を身につけることが目的だった。

 

一方で収集したデータを活用し発注は本格的に仕組化。半自動発注システムを確立している。勘による仕入れではなくあくまでもデータに基づいて仕入れを行うことで適正な在庫量に保つことが可能になっている

 

第三章 ものづくりは売価から

通常の商品作りはまず原価を積み上げてからそこに利益を乗せることで売価を決定する。ワークマンの商品作りはその逆をいき、まず売価を決定する。先に売価を決定し、その売価を揺るがせないことで1円、2円を削り、脅威の原価率65%を達成しているという。

 

第四章 ファンの辛辣な文句はすべてのむ

もともとワークマンは作業服の専門店。その商品が一般消費者にまで広がったきっかけの一つがバイク乗りたちがワークマンの服を”頑丈だ”という理由で愛用しており口コミで広まったからだという。この流れからワークマンではユーザーの口コミを非常に大切にしておりインターネットの声に耳を傾けている。そして現在ではインフルエンサーを味方につける独自のマーケティング戦略を実行している。

 

第五章 変幻自在の広報戦略

ワークマンは広報戦略も独特。阪急西宮ガーデンに世界的スポーツ用品チェーン店の『デカトロン』が進出してきた際には西宮戦争というやや物騒なキーワードを使ってワークマンの知名度を引き上げました。2019年の秋冬新作発表では「過酷ファッションショー」と銘打って舞台に雨風を降らせることでマスコミの注目を集めるという手法を活用した。

 

第六章 店づくりは壮大な実験

ワークマンは既存のワークマンに並んでいる商品からタウンユースや女性にうけそうな商品を選び出すだけでワークマンプラスという新業態を生み出した。今でも第二、第三のワークマンプラスになりそうなネタはたくさんあるという。「レディース」「シューズ」「レイン」など既存の商品の切り出し方次第で次々と新業態は創り出せると土屋氏は言う

 

第七章 継続率99%のホワイトなFCシステム

ワークマンのFCは驚異の継続率99%。その秘密は「店休日(年間22日)」「平均年収1,000万超」「7-20時営業、5分で帰れる」という超ホワイトな仕組み。一方でその仕組みを維持するためにもFC加盟の条件は厳しい。

  • 個人として契約が可能で店舗運営に専念(副業禁止)
  • 共に50歳未満で専従者と2名での加盟が可能(原則夫婦)
  • 地元で生活し高速道路を使わず通勤40分圏内(ワークマンプラスは30分圏内)
  • 健康状態が良好(健康診断書の提出が必要)

 

第八章 変えたことと変えなかったこと

土屋氏がきてから前述した中期経営計画を達成するため変えたことと、変えなかったことがある

変えたこと

  • SPA企業になることで商品にブランド力をつける
  • 前例踏襲の経営判断からデータ経営へ
  • 言ったことは必ずやる「本気の経営」
  • トレードオフ。頑張る代わりに何かを捨てる

変えなかったこと

  • 店舗の標準化
  • ローコスト経営
  • やらないことが決まっている経営
  • ステークホルダーは長期固定

第九章 アフターコロナ

土屋氏はアフターコロナにおいて小売りが強く成長するためには3つの内容を満たす必要があると提言している

  • 同質経営ではない。独自のポジションをとる
  • 時代の変化を先取り
  • 愚直に方針を徹底

 

おわりに

ワークマンの躍進は止まりません。現在のところ追随する企業の無い独走状態。その要因は複合的に様々な要因がありますが、唯一無二であり似たような業態が無い独自戦略にあると思います。そんなワークマンの強みを知ることができる一冊です。

 

著者紹介

酒井大輔。1986年石川県生まれ。京都大学法学部卒業後、金沢で新聞記者に。北陸新幹線担当として経済部、社会部で開業報道を担う。2017年2月、日経BPに入社。日経トレンディ編集部に加わり、五輪連載「Road to 2020」を担当。18年6月から日経クロストレンド兼日経トレンディ記者。20年6月から日経クロストレンド記者。再開発・商業施設・ホテル・新業態店からヒット商品、スタートアップ、経営者インタビューまで。街が変わる、世の中を変える試みの背景を物語まで描き出す一本入魂スタイルで執筆を重ねる。