- ・『アフターデジタル』の中身をすぐ知りたい
- ・アフターデジタルってどうゆうこと?
- ・中国で起こっているデジタル化を知りたい
- ・『アフターデジタル』の要約と書評
- ・アフターデジタルという概念
- ・中国で起こっているデジタル化
- ・オフラインとオンラインの境目が無くなる「OMO」という考え方
書籍「アフターデジタル」の書評と要約になります。
「2025年までに日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まなければ12兆円にも及ぶ経済損失が生じる」
これは2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」の内容で「2025年の崖問題」として日本企業に警鐘を鳴らしています。
直近では新型コロナウイルスへの対策としての給付金の支払いの場面や陽性者の人数確認をFAXでおこなっているなどで日本のデジタル化は遅れているという認識が広がりました。
政府としてもデジタル庁の創設などデジタル化の推進を宣言しています。
本書は中国において日系企業向けにコンサルティングを行っている株式会社ビービットの藤井保文氏とIT評論家の尾原和啓氏の共著となります。
藤井氏と尾原氏は本書を通して世界と日本のデジタル化の現状を伝え、ビフォアデジタルからアフターデジタルへの変革を促しています。
デジタル化の現状
北欧のデジタル化
エストニアは現在世界で最もデジタル化が進んでいる国となります。
外国人にも電子居住権「e‐Residency」を発行し、簡単に電子国民になれます。
電子居住権は日本の戸籍とは異なるものですが、エストニアでは日本と違い行政もほとんどデジタル化しているので電子居住権を持つことでエストニア国内での起業の手続きが簡易になったり永久に使用可能なビザが発行されたりします。
スウェーデンではもはやキャッシュレス決済が当たり前になっています。
日本では最近進んでいるQRコードやスマホを使用した決済すら過去のモノとなり、今では人間の体内に注射で埋め込んだマイクロチップでのデジタル決済を行います。
電車、レストランやショッピングでもその方法で決済を行うので財布を持ち歩く必要がありません。
中国のデジタル化
隣国の中国ではインターネットを使用している人口が8億人を超え、その97%がスマホを保有しています。都市部ではスマホ所持者の98%がモバイル決済を行っているとの調査結果もあります。
すでにタクシーの配車や食事、医療品の配達など、すべてがアプリ上で完結します。
近年の中国は「デジタル先進国」として注目されています。
約14億人の国民が生み出すビッグデータと超優秀な人材が政府の後押しによって新たな社会インフラとなるサービスを次々と生み出していきます。
今後は中国で生まれた技術や事業モデルが世界に広まっていくでしょう。
中国のデジタル化を大きく進めた要因として「モバイル決済」があります。
主流派アリババグループの「アリペイ(Alipay)」とテンセントの「ウィチャットペイ(Wechat Pay)」です。
どちらも中国人顧客への対応を見据えて日本国内でも使用可能な店舗が増えていっています。
これも今後の世界のIT化を中国が牽引すると予測される所以です。
14億人からなる購買力を自国で取り込みたければ自国の決済手段を使わせるよりも、彼らの決済手段をそのまま使わせるほうがハードルは低くなります。
またアリババグループのアント・ファイナンシャルでは2015年から「ジーマ・クレジット(芝麻信用)」という信用スコアのサービスを開始しました。
ジーマ・クレジットは単体のサービスではなくアリペイの機能の一部です。
アリペイによる支払いデータやオンラインの購買データからユーザーの信用スコアをはじき出します。
この信用スコアはユーザーの支払い能力を可視化したものでこのスコアがアリババ・グループやその提携企業のサービスを受ける時のインセンティブに繋がったり、賃貸物件を借りる時や個人で融資を受ける時の審査に使われたりします。
なので中国の方は自分で自分のジーマ・クレジットを引き上げるために出身大学や職業を積極的に登録しています。
アフターデジタル時代のOMO
アフターデジタル
アフターデジタルの言葉の意味ですが、これまでの世界ではあくまでもオフラインであるリアルの世界が中心でデジタルの世界はオフラインを便利にするための付加価値的な存在でした。
この今までの世界をビフォアデジタルと呼びます。
一方でアフターデジタルの世界では人は常時デジタル環境に接続していてリアルの行動も含めたすべての行動がデジタル化されます。
ビフォアデジタル
リアル(店や人)でいつも会える顧客がたまにデジタルにも来てくれる
アフターデジタル
デジタルで絶えず顧客と接点があり、たまにデジタルを活用したリアル(店や人)にも来てくれる
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上でこの考え方に転換できるかどうかが最も重要です。
OMO
OMOとは「Online Merges Offline」の略称。いわゆる「オンラインとオンラインの融合」となります。
これまではインターネットをいかにビジネスに活用するか?という考え方でしたが、これからは「リアルな場所や行動も常にオンラインに接続している状態」になり「オフラインが存在しない前提」でビジネスをどう展開していくか?という思考への転換がひつようです。
混同しやすい言葉にO2Oがあります。
O2Oとは「Online to Offline」の略称であり、オンライン(インターネット、SNS)でのアプローチからオフライン(実店舗などの顧客との直接の接点)へ顧客を誘導することです。
まとめ
世界はこれからアフターデジタルの到来=ビジネスの根本的変化の時代を迎えます。
そしてその世界では中国は日本よりもはるか先を走っています。
本書ではビフォアデジタルからアフターデジタルへの思考の転換方法や実際の事例が多数紹介されています。
現在、どのような仕事をされている方でもこれからの時代の転換を無視して生きていくことはできないので本書でアフターデジタルとはどんな世界か?中国ではすでにどんなことが起っているのかを学んでおく必要があるでしょう。
著者紹介
藤井 保文(ふじい やすふみ)
株式会社ビービット 東アジア営業責任者/エクスペリエンスデザイナー
1984年生まれ。東京大学大学院学際情報学府情報学修了。
2011年、ビービットにコンサルタントとして入社し、金融、教育、ECなどさまざまな企業のデジタルUX改善を支援。2014年に台北支社、2017年から上海支社に勤務し、現在は現地の日系クライアントに対し、モノ指向企業からエクスペリエンス指向企業への変革を支援する「エクスペリエンス・デザイン・コンサルティング」を行っている。
2018年8月には『平安保険グループの衝撃‐顧客志向NPS経営のベストプラクティス』を監修・出版。
2018年9月からはニューズピックスにおいて、中国ビジネスに関するプロピッカーを務める。
尾原 和啓(おばら かずひろ)
IT評論家。 藤原投資顧問書生
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究応用人工知能論講座修了。
マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:Klab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業計画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能アドバイザーなどを歴任。
著書「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)はKindleビジネス書1位、「ITビジネスの原理」(NHK出版)は2014年、2015年連続TOP10のロングセラー(2014年7位、2015年8位)