アメリカのトランプ大統領は現地時間2020年6月22日、非移民に対するH-1B、L1、J1などの就労可能なビザの発給、入国を停止することを発表しました。
6月24日から2020年いっぱいの期間ということです。
対象となるのは、特殊技能職に発給するH1-Bビザ、熟練・非熟練労働者に発給するH2-Bビザ、企業駐在員に発給するLビザ、交流訪問者に発給するJビザを取得していてアメリカに入国しようとする時にビザの発効日時点で以下の要件に該当する場合です。
- アメリカ国外に滞在
- 有効な非移民ビザを有していない
- 発行日時点で有効もしくは発行日以降に発給されアメリカへの渡航・入国申請を許可するビザ以外の有効な渡航書類を有していない
永住権を有する人、アメリカ人配偶者や子である人など一部の対象外はいるようです。
ではビザの発給が停止されると何が問題なのでしょうか?
そもそもビザとは何でしょうか?
ビザとは?
ビザとはそもそも日本語で「査証」というものです。
査証とは、国家が自国の国民以外に、その人物の持つ旅券(パスポート)が有効でありその人物を自国に入国させても問題無いと示す書類です。
そしてビザとはあくまでも入国の許可証ではなく、入国許可申請の際に必要な書類の一部ですのでビザがあれば入国できるという訳ではありません。
ビザは言い換えると入国するための事前審査のようなものです。
この事前審査にパスするとビザが発行され、入国審査官がビザやパスポートなどを元に入国審査を行うのです。
なぜ必要?
例えばアメリカに旅行に行く人がいるとします。
アメリカは世界的に有名な都市が沢山ありますので行きたい人は沢山います。
では誰でもアメリカに入っていいのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
海外旅行に行く際に真っ先に思い浮かぶのはパスポートですよね。
パスポートはあくまでも日本国が日本人であるという身元を証明するものなのです。
一方でビザはアメリカであればアメリカという国家が「この人はアメリカに入国させても問題ないですよ」と証明する書類です。
そのように審査をしてアメリカでよからぬことをしようとしている人などが国に入り込むことを防いでいるのです。
ビザってどこで手に入るの?
ビザは外国人が国に入国するための書類なので原則として在外公館(大使館・領事館など)が発行を行います。
また国によっては国境や国の入国審査所で即時発行が可能なこともあります。
ビザを取得したこと無いですよ
実は観光目的や短期滞在なら国家間の取り決めによってビザを免除していることがあります。
これはあくまでも査証が必要ないという意味であり、入国審査、入国申請、在留許可申請は別途あります。
日本はビザなしで渡航可能な国が世界で一番多い国となっています。(ヘンリー・アンド・パートナーズ調査、2019年1月時点)
日本の査証免除国は190か国。韓国・シンガポールが189か国、ドイツ・フランスが188か国と続いています。
理由としては様々ありますが、日本が経済的先進国の一員であることや治安の良い国であることが関係していると思われます。
190か国で免除ということはほとんどの国でビザが不要ということになります。
日本人にとってビザは身近なものではなく発行したことが無い方が多いのです。
一方査証免除国が少ないのは、朝鮮民主主義人民共和国が42か国、アフガニスタン・イラクが30か国で最低です。
アメリカのビザ発給停止でどうなる?
ビザ免除の話はあくまでも観光や短期滞在の話です。
たとえ日本国人でも他国で働くとなるとビザが必要になります。
国家としてはまず自国民の雇用が最優先であり、あくまでも外国人が働くのは優先順位で言えば2番目以降となります。
今回の大統領宣言は4月22日に発令されたアメリカ国外での新規グリーンカード発行と入国を60日間禁止するとした前回の大統領宣言の対象を拡張と延長する形で、駐在員のための転勤ビザL-1や専門職の就労H1-B、それらの配偶者、季節労働者H2-Bなどの年内の受け入れを停止するものです。
今回の措置の理由としては、新型コロナウイルスの感染拡大を原因としてアメリカ国内の失業率が大幅に高まっていることが上げられています。
現在アメリカ国内の失業率は10%以上と非常に高い水準にあります。
トランプ大統領としてはまずは自国民の雇用を優先するためにも外国人の労働力は受け入れないとアピールする必要があると思われます。
政策としては賛否両論の状態のようです。
こういった閉鎖的な政策に対して開かれた国を目指す層からは批判をされていますが、一方で好意的に受け止めている層もいるようです。
トランプ大統領としては自らの支持層に対するパフォーマンスといった側面もあります。
また、新型コロナウイルスによるパンデミックの真っただ中なのでいずれにせよ経済への影響が限定的であることを見越しての措置なのかもしれません。
しかしながら、新型コロナウイルスによるパンデミックが落ち着きをみせたら渡米して働きたいと考えていた人たちにとっては先行きが見通せない事態となってしまったと言えるでしょう。